オーナーは家業が石積み職人でした。
    幼い時から祖父に連れられ石積みの現場で石積みに触れながら、幼少期を過ごしました。
    大人になって家業を継ごうと思い石積みの修行をしたが、自己主張が強すぎ、親方と意見が合わず、今となっては親方の気持ちがわからない未熟者だったので、大切な家業を辞めました。
 そこから7年。大阪に来て色んな方にお世話になりながら色んな仕事をさせていただき学びました。
    心の中には、いつも独立して認めてもらいたい気持ちがあふれていました。
    30歳になったときには「必ず独立する」という青臭い想いを抱いて日々過ごしていました。
    しかし、いざ30歳になって独立しようと考えたときに、何をしていいかわかりませんでした。今までは「30年間生きてきて自分一人で何でもできる」と、恥ずかしながら思っていましたが、独立を考えるに当たり、他者を理解する力、精度、自分は人の支え・協力がなければ何一つできないことに心から気づきました。
    そのことを思わせてくれたのは、妻であり家族でした。
    独立を考えたとき何をしていいかわからなかった私だったので、あれをしたらいいのでは、これをしたらいいのではと色んなビジネス案を出し、丸1年色んな所を実際に目で見て歩きました。
    そんな時にふと思い浮かんだのが横浜に行った際に見た赤レンガ倉庫でした。
    そこからなぜか頭の中で無意識に、赤より高級なものはという発想になり、黒の漆喰をイメージした「黒レンガ倉庫」という名前が思い浮かびました。
    この名前はいいなと無意識に思いましたが、この名前で何をしていいかはわかりませんでした。
    職人時代の未熟な私と30歳になった当時の私では、私自身から見て格段に、昔より良くなっていると確信していました。

    そんな中で考えたことが昔の自分と今の30歳の自分を比べたときに、「何が違っているのか」「どんな生活習慣の違いがあるのか」でした。それが缶コーヒーを飲んでいた自分から、毎日打ち合わせやお客様とお話しする際にカフェで珈琲を飲んでいるということでした。私はこのことが昔の自分と、30歳の自分と一番違うことだと心の底から思い、黒レンガ倉庫はCAFEにしようと考えました。 
   しかしここからが長かったのですー。
    黒レンガ倉庫CAFEを作ろうと考え、色んなデザイン事務所に話に行ったが、しっくりきませんでした。
    そしてもう最後だと思ったとき、今の私に考え方を教えてくれた大切な方と出会いました。
    その方と出会って色々話をさせていただきましたが、どうもしっくりこず沈黙になりました。沈黙は10分以上続きここからどう前に進めていいか、私自身の力では無理なんではないかと恥ずかしながら思いました。
    その時、その大切な方が話してくれました。
    あなたは今まで何をしてきましたか?何だったら一番自信がありますか?と。
    私は家業が石積みをする職人で石積みのことならと言いました。
    石積みのことを聞かれ、無意識に石積みのことを楽しく話していました。
   それを見ていたその方があなたは常に石積みのことを考えて生きていますねと言いました。
    私ははっと我に返りました。頭の中では石積みのことを全否定して7年間生きてきましたが、私自身の心の中には石積みの強いスピリッツがあることに気づきました。
    冷静に自分の7年間を振り返ると、石積みをやめてから1日も石積みのことを考えなかった日はなかったことに気付いたのです。
    その時思ったことが私の心の中にあるスピリッツ、一番大切な考え方は幼少期に作られたひとつひとつ石のようにしっかり積み上げる「積む」ということだと確認し、その時家業を継ぐことが出来なかった想いを黒レンガ倉庫に託しました。
   そうして、黒は“最高級”、レンガは“積む”、倉庫は“集める”をコンセプトにしました。
   黒レンガ倉庫で過ごす大切な時間を、美味しい珈琲とこだわりを持った空間でお楽しみください。
   このプロジェクトにたずさわった多くの方々に心より感謝申し上げます。

 

オーナー